「俺がどれだけリゼットのことを大切に想っていたか、知らないわけではないだろう……! 俺はずっと、リゼットのことが好きだった」


 荒みきった心にテオの言葉がしみこんでくる。リゼットは小さくうなずいた。


「他の男の妻であるリゼットを見るのはとても辛かった。名ばかりだと知っていても、それでもすごく嫌だった。それでも俺は、どうしてもリゼットのそばにいたくて……」

「うん……うん。そうだったらいいなって思ってた」


 それはあまりにもずるく、聖女らしからぬ考えだ。けれど、テオの気持ちが自分に向いていてほしい、いつまでも思い続けてほしい――そうリゼットは願っていた。たとえ結ばれずとも、ずっとそばにいてほしい、と。


「リゼット、おまえはこれからなにがしたい? なにがほしい? 全部俺が叶えてやる。これまで我慢してきた分だけ、全部」


 テオがリゼットの額に口づける。


(私の願い)


 そんなこと、口にしてもいいのだろうか? 一度口にしてしまったら、きっともう止まらない。止めることができない。けれど――