「テオ……どうしてここに?」

「殿下があなたを城から追い出したと聞いて……聖騎士団を辞めてきました」


 テオは馬から降りると、リゼットに向かって手を差し出す。


「辞めた? だけど……」

「リゼットのいないあの場所に俺がいる意味はないから」


 その瞬間、リゼットが小さく息を呑む。


(今、私の名前……!)


 聖女に就任してからは頑なに呼んでくれなかったというのに……。彼女はテオをまっすぐに見上げると、胸のあたりをギュッと握った。


「だけど、テオには心に決めた人がいるって……」

「そんなの、リゼットに決まっているだろう?」


 テオがリゼットを抱きしめる。リゼットの瞳から涙がこぼれ落ちた。