「そんなことする必要ないわ! 今後もブレディン様と思う存分会ってください! というか、わたしは二人が結ばれることを望んでいて……」

「……だけど、私じゃダメなんです」


 胸を締め付けられるような切ない声音。気づいたらアイラは泣いていた。
 わたしは思わずアイラの側に駆け寄って、彼女の背中をそっと撫でる。


「私には豊かな領地も、政治的な後ろ盾も、彼の領地を立て直すだけの資金も、なにもありません。けれど、マヤ様にはそれがある……でしょう?」

「アイラ様……」


 ダメだ。ずっとアイラの目線で物語を読んできたんだもの。アイラの気持ちが痛いほどわかる。わたしまで涙が出てきた。

 愛する人の側にいたい。
 力になりたい。
 けれど、それができないもどかしさといったらたまらないだろう。


「どうかブレディン様の力になってあげてください。どうか、どうか……」


 アイラの必死の懇願に、わたしはかける言葉が見つからなかった。