しかしながら、ブレディン様が拒否していない以上、すぐには婚約解消できそうにない。

 この場合、わたしから破棄するのが一番なんだろうけど『ブレディン様とアイラ様がハッピーエンドを迎えてほしいから』なんて理由が通る気がしないし、下手すりゃ余計に話がこじれる。というか、それが果たしてハッピーエンドといえるのか……激しく疑問だ。


(ああ、どう動くのが正解なのか誰か教えてほしい)


 この漫画、隔週連載だったからな……。乙女ゲームみたいにルートが全部わかっていたら対処しようもあっただろうに。結末が唯一無二な上、その過程がわからないんじゃどうにもならない。


「お困りですか、お嬢様?」

「アンセル!」


 ひとりでウンウン唸っていたら、アンセルがお茶を持ってきてくれた。本当によく気が利く執事だ。


「それがね……」


 わたしはブレディン様とやりとりした内容をアンセルに説明した。アンセルは特段驚いた様子もなく「そうですか」と返事をする。


「まあ、想定の範囲内ですね」

「嘘!? わたしはすごくショックだったのよ? あそこでカッコよく『実は俺には心から愛する令嬢がいます。彼女を幸せにしたいから、あなたとは結婚できません』とか言ってほしかったのに!」

「……まあ、お嬢様がそう思われるのもわかります」


 そう言ってアンセルは笑う。わたしは思わず唇を尖らせた。