(嘘、嘘! 嘘だ。嫌じゃない? そんなバカな!)


 だってだって、あなたにはアイラがいるじゃない! アイラ以外の女性と結婚とか無理でしょう? ありえないでしょう? というか、わたしが受け入れられないんですけど!


「俺は貴族です。貴族とは家や領民のために生きるものです。いつかはこんなふうに結婚をする日が来ると思っていました。こんな良縁はまたとありませんし」

「いや、そうかもしれないけど……!」


 じゃあ、なに? ブレディン様ったらそんなことを思いながらアイラと交際していたの? やだ。無理。見損なった! ……というか、切なすぎて涙が出てくる。いや、貴族としてはこれが正しいのかもしれないけどさ。


「婚約者として、これから仲良くしていただけたら嬉しいです」


 ブレディン様がそう言って微笑む。今にも泣き出しそうな表情で。……ああほら、やっぱり嘘。全然、いいと思ってないんじゃない。


(絶対、なんとかしなきゃ)


 決意を新たに、わたしはひとり拳を握った。