「本当だよ。……そうじゃなかったら、こんなに必死になったりしない」


 アンベール様は言いながら、私のことをまっすぐに見つめた。熱い眼差しに胸がドキドキと高鳴っていく。


「ねえ、ラナはファビアン公爵との婚約話が流れたあとのこと、考えたことはなかった?」

「それは……当然あったわ。だけど、アンベール様からはなにも言われなかったし、きっと頃合いを見計らって別れたことにするんだと思っていたんだけど」

「僕にはそんなつもりはさらさらなかったよ。この機会を利用して、ラナに僕のことを好きになってもらおうって決めていた。絶対に逃さないって……」


 ギュッと強く抱きしめられて、息がまともにできなくなる。聞こえてくるのは二人分の心臓の音。アンベール様にもすでに私の気持ちはお見通しだろう。


「これでもまだ嘘だと思う?」

「……ううん。だって、これじゃ勘違いしようがないんだもの」


 私たちは顔を見合わせつつ、満面の笑みを浮かべるのだった。