「だってだって、アンベール様はいつもわたくしに優しかったもの! わたくしを特別扱いしてくださったもの! てっきりわたくしのことが好きだと思っていたのに……」

「勘違いさせたならごめん。だけど僕はロミーのことは妹のようにしか思っていない」


 きっぱりとそう口にすれば、ロミー様は唇を引き結んで踵を返す。かける言葉が見つからないまま、私は呆然と彼女の後ろ姿を見送った。


***


「驚かせてすまなかった」


 会場の外を歩きながらアンベール様がそう口にする。


「いえ。だけどその……本当なんですか? さっきの話」


 正直言ってにわかには信じがたい話だ。アンベール様が私を好きでいてくれたなんて……ロミー様から私を守るための作り話だって言われたほうがよほどしっくりくる。