「そんな……しかし」

「ラナは貴方にはもったいない素晴らしい女性です。毎日図書館に足を運んで資料を読み漁ったり、消灯時間ギリギリまで勉強をしてきた姿を僕はこの目で見ています。何度も何度も城や王都に足を運んで理想を思い描き、未来に思いを馳せてきたことを僕は知っています。それを否定するような人間にラナのことは渡せません」


 アンベール様の言葉に涙が止まらなくなってしまう。


「アンベール様……」


 ありがとうと伝えたら、彼は私の頭を撫でてくれた。
 ファビアン公爵が逃げるようにして私たちの前からいなくなる。私が改めてお礼を言おうとしたときだった。


「よかったですね、ラナ様! これで全部決着がつきましたね!」


 満面の笑みを浮かべたロミー様が私たちのところにやって来る。


「ロミー。悪いけど今は……」

「嫌です。だってわたくし、この瞬間をずっとずっと待っていたんだもの。本当によかったぁ。安心しました」


 そう言ってロミー様は私の腕をグイッと引く。アンベール様から半ば強引に引き離され、私は静かに息を呑んだ。