長期休暇に入ってすぐに夜会は開催された。アンベール様が用意してくれたドレスに身を包み、私は彼と一緒に会場に入る。
「綺麗だね」
アンベール様が言う。彼が今見つめているのは私だ。……多分それであっている。だけど、私はドギマギしながら「会場が?」と返事をした。
「ラナが。わかっているくせに」
そんなふうに笑いながら、アンベール様は私のことを優しくエスコートしてくれる。
恋人のふりをはじめて以降も、私はちっとも素直になれなかった。だって、恥ずかしいし、どこまで甘えていいかなんてわからない。本当の恋人同士ならもう少し違うのかもしれないけど……。
(やっぱりアンベール様は目立つなぁ)
さっきから出席者たち(とりわけ令嬢やご婦人方)の視線を一身に集めている。だけど、ちっとも物怖じしていない。
カッコいい。すごく素敵だって、私も言えたらいいのに。でも、どうにもこうにも口が動かないんだもの。私は内心でため息をついた。
「ラナ、僕と踊ってくれる?」
「……ええ」
今夜はそのために来たんだもの。……それでも、誘われたことがとても嬉しい。
ダンスをしている最中はアンベール様の視線をいつもより強く感じた。だけど私は気恥ずかしくて、ちっとも彼の顔が見れない。もう二度とこんな機会はないかもしれないのに……。
(このまま時が止まってしまえばいい)
そうしたらずっと、恋人のふりをしていられる。文官としての未来を夢見ながら、幸せに過ごせるかもしれない。
「綺麗だね」
アンベール様が言う。彼が今見つめているのは私だ。……多分それであっている。だけど、私はドギマギしながら「会場が?」と返事をした。
「ラナが。わかっているくせに」
そんなふうに笑いながら、アンベール様は私のことを優しくエスコートしてくれる。
恋人のふりをはじめて以降も、私はちっとも素直になれなかった。だって、恥ずかしいし、どこまで甘えていいかなんてわからない。本当の恋人同士ならもう少し違うのかもしれないけど……。
(やっぱりアンベール様は目立つなぁ)
さっきから出席者たち(とりわけ令嬢やご婦人方)の視線を一身に集めている。だけど、ちっとも物怖じしていない。
カッコいい。すごく素敵だって、私も言えたらいいのに。でも、どうにもこうにも口が動かないんだもの。私は内心でため息をついた。
「ラナ、僕と踊ってくれる?」
「……ええ」
今夜はそのために来たんだもの。……それでも、誘われたことがとても嬉しい。
ダンスをしている最中はアンベール様の視線をいつもより強く感じた。だけど私は気恥ずかしくて、ちっとも彼の顔が見れない。もう二度とこんな機会はないかもしれないのに……。
(このまま時が止まってしまえばいい)
そうしたらずっと、恋人のふりをしていられる。文官としての未来を夢見ながら、幸せに過ごせるかもしれない。



