「一体なんのために?」

「わかりません。ただ、文官登用試験まであまり時間がありませんし、将来に向けた話なのかなぁと……」

「アンベール様!」


 と、愛らしい声音が私たちの会話を遮った。ついで、ふわふわのピンク色の髪をした令嬢がアンベール様に飛び込んでくる。


「ロミー」


 アンベール様が言えば、彼女はふわりと花のような笑みを浮かべた。


「掲示板見ました! さすがはアンベール様ですわ! あまりにも誇らしいですし、どうしても『おめでとう』と言いたくて、急いでやってきてしまいました」

(……相変わらず仲がいいですねぇ)


 ロミー様は私たちの一つ年下の伯爵令嬢だ。アンベール様とは幼馴染らしく、しょっちゅう二人で会話をしている。


「ありがとう、ロミー。ロミーにそう言ってもらえて光栄だよ」

「本当に? わたくし嬉しい! とっても嬉しいです!」


 ロミー様はそう言ってアンベール様の手をギュッと握った。

 しょっちゅう会話をしているというかスキンシップが多いというか……ロミー様はよくアンベール様に甘えているし、アンベール様もそれにこたえている。今だって彼女の頭を優しく撫でているし、声だって穏やかで温かい。