「エズメ様がおっしゃっていたこと、間違いばかりじゃないんです。キツイなって思ったこともありましたけど、もっともだなって思うことも多かったですし。くだらないおしゃべりもいっぱいして、たくさん笑いあったし、嫌なことばかりじゃありませんでした。それに……」


 アメリーはそこで言葉を区切ると、セヴランのてのひらを握り返す。


「私、セヴラン様に会いたくて――そのためにこの屋敷に通い続けていたんです。あなたのことが好きでたまらなかったから。だから……」


 ふわりと唇が重なり、心がじんわりと温かくなる。見つめ合い、微笑みあってから、二人はふふ、と笑い声を漏らす。


「そういえば――俺も同じだ。エズメの言ってたこと、間違いだけではなくて」

「え?」


 きょとんと目を丸くするアメリーに、セヴランは照れくさそうな表情でそっぽを向いた。


「俺が神殿に通いはじめたこと――アメリーと親しくなりたかったのが理由だから。もちろん、今はそれだけが理由ではないけど……」


 その瞬間、アメリーは弾かれたような表情で、セヴランのことをじっと見つめる。


「……やっぱり幻滅した?」

「まさか」


 それから二人はもう一度笑い声を上げ、互いを抱きしめ合うのだった。