「――どうしたの、アメリー。今日はなんだか元気がないね?」


 子どもたちに勉強を教えたあとのこと、アメリーはセヴランから声をかけられた。内心驚きつつ、アメリーは首を横に振る。


「いえいえ、そんなことありませんよ」


 アメリーはちゃんと笑っていた。ちゃんといつもどおりに振る舞えていたはずだ。子どもたちからも、参拝客からも、他の誰にも指摘されなかったし、彼女自身自信がある。


「嘘つき。……ずっと見てたからわかるよ」


 そっと頭を撫でられ、目頭がグッと熱くなる。泣いたらダメだと――そう思うのに、こらえることができなかった。


「……なにがあったの?」


 セヴランがたずねる。……が、アメリーは首を横に振った。エズメの兄である彼に事の次第を伝えたくはない。知れば絶対に傷ついてしまう。


「わかった。理由は言わなくてもいいけど、俺の前でまで無理しないで」


 ギュッと優しく抱き寄せられ、アメリーは涙が止まらなくなる。


「ありがとうございます」


 と、そう伝えるのが精一杯だった。