「セヴラン様?」


 どうして彼がここにいるのだろう? 真っ赤になって戸惑うアメリーに、セヴランは優しく微笑みかけた。


「神殿で小さな子どもたちに勉強を教えているって聞いて、興味があったから覗いてみたんだ。そしたら、アメリー嬢を見つけて、つい声をかけてしまったんだけど……迷惑だったかな?」

「そんな! 迷惑だなんて、とんでもないです」


 むしろ、嬉しい――とは口が裂けても言えなかったが、アメリーは必死に笑顔を作る。


「誰? アメリー様の知り合い?」


 と、子どもたちがアメリーに問いかける。しかし「そうだよ」と自分から言うのは気が引けるし、「違うよ」とこたえるわけにもいかない。


「えっと……」

「そうだよ。俺たちすごく仲良しなんだ」


 アメリーがこたえるより先にセヴランがニコリと微笑む。


「そうなんだ!」


 と、喜ぶ子どもたちをよそに、アメリーはドキドキと胸を高鳴らせた。


(仲良しって、仲良しって……!)


 もちろん、子どもたちのためについた嘘だとわかっているが、好きな人からそんなふうに言われて嬉しくないはずがない。ちらりとセヴランを見上げたら、彼は少し照れくさそうな表情で笑った。