「ですから、こっから先はスピード勝負っす。レイラーニ嬢はさっさと追放しちゃいましょう。そうすればこの国は平和になるんで」

「……そうだな! それが良いな!」

(いや、馬鹿か)


 早かろうが遅かろうが『レイラーニを追放したら暴動が起きる可能性がある』とわざわざ教えてやったというのに。彼の頭はレイラーニを痛めつける方向にしか働いていないらしい。ベルクはフッと鼻で笑う。


(ホント、こんなんがトップに立つぐらいならいっそ滅んだほうがマシかもしんねぇなぁ)


 イミティアと抱き合うシュタインを見遣りながら、ベルクは小さくため息を吐いた。


「と、いうわけで、ここから先のことは俺一人におまかせを。
殿下は――――せっかく婚約破棄も成立したことですし、改めてプロポーズでもしてきたらどうっすか?」

「それは……いい考えだな! 行こう、イミティア! 私は以前から、星空の下、お前に愛を告げると決めていたんだ!
しかし、ベルク。お前にそんな気骨があるなんて思わなかった。見直したぞ! もしもレイラーニの追放が上手くいったら、お前を出世させてやろう」

「そりゃ、どうも」


 そんなことは良いからさっさと行け――――ベルクはニコニコと微笑みながら、シュタインに向かって手を振る。シュタインとイミティアは上機嫌のまま、夜会会場を後にした。

 パタンと音を立てて扉が閉まる。会場は、シンと静まり返っていた。