「なんてこと? 当然のことだろう? おまえはこの私を怒らせたのだから。
だが、跪いて許しを請うなら、追放だけは考え直してやっても良い。……まあ、お前のようなプライドの高い女がそんなことをするとは到底思えないがな」


 シュタインは短い足を前に突き出し、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。
 レイラーニは大きく目を見開き、視線をそっと下に向ける。どうするべきか、考えあぐねているのだろう。


(無理だろうな)


 ベルクの予想どおり、彼女は首を横に振ると、忌々しげに唇を噛んだ。
 もはやここまで。これ以上、話し合いの余地は残っていない――――というか、時間の無駄だろう。


「――――殿下、ちょっと良いっすか?」


 そのとき、ずっとシュタインの後ろに控えていたベルクがそっと手を上げた。

 着崩された騎士装束、ツンツンと逆毛立てられた深緑の髪、気だるげな雰囲気を纏っているが、それがとても似合っている。目鼻立ちが整っているせいか、妙にカッコよく見える男性だ。