「減らず口をたたくな! 
これ以上、こんな恐ろしい女をこの国には置いておけない。何をしでかすかわからないし、私やイミティアが安心して暮らせないからな。
よって、レイラーニは国外に追放する!」

「なっ……!」


 あまりにも横暴なシュタインの宣言に、会場が再び騒然となってしまう。
 百歩譲って婚約破棄は受け入れられたとしても、国外追放となれば話は別だ。公爵家は黙っていないだろうし、下手すれば内紛が起きてしまう。それだけの武力と影響力を公爵は持っているのだから。


「一体どうなっているんだ?」

「こんなことが許されるのか?」

「陛下は一体何をなさっているんだ?」


 けれど、勝利の味に酔いしれているシュタインには、彼らの声は聞こえない。彼はイミティアのことを抱き締めつつ、愉悦に満ちた笑みを浮かべている。


「殿下、貴方は一体なんてことを……」


 レイラーニの声は震えていた。さすがに現実を受け入れられないのだろう。
 ――――無理もない。こんな男が自身の婚約者だったなんて、考えるだけで虫酸が走るだろうから。