「だけど、その……一緒にダンスを踊りたい男とか、いたんじゃないのか?」


 ゲイル様が質問を重ねる。
 ふと見れば、彼の顔は真っ赤だった。繋いだ手に力を込められ、わたしの胸がキュッと疼く。


「いましたよ」

「……!」

「わたしは今夜、ゲイル様にダンスを申し込もうと思っていたんです」


 緊張と恥ずかしさのあまり、涙がこぼれ落ちそうだった。だけど、なんとかわたしの想いが伝わってほしくて――必死にゲイル様のことを見つめる。
 彼は少しだけ目を見開いたあと、わたしの頬をそっと撫でた。その表情が、手付きが、あまりにも優しくて、ポロリと涙がこぼれ落ちる。


「俺はウィロウ嬢が好きだ」


 ゲイル様がわたしのことを抱きしめる。わたしとゲイル様の二人分の鼓動の音が聞こえてくる。わたしは「はい」と小さく呟いた。