「ゲイル様! どうして……」

「どうして? 聞きたいのはこちらのほうだ。俺はラジェム家と縁をつなぎたかったわけじゃない。ウィロウ嬢が好きで、彼女と結婚がしたくて婚約を申し込んだんだ。それなのに、無関係な君と婚約をするはずがないだろう?」


 ゲイル様の言葉に心臓が跳ねる。エミュリアの頬が真っ赤に染まっていく。驚きの声、嘲笑の声、周囲がにわかにざわめいた。


「そ、んな……だって! だってわたくしは主家の娘で、家格も釣り合っていて、だから……」

「たしかに、ラジェム家からは『エミュリア嬢を』と遣いが来た。けれど、それじゃ意味がないと伝えたし、既に誤解はとけている。先方も了承済みの話だよ」


 ゲイル様はそう言ってわたしを見つめる。それはエミュリアに向けた厳しい言葉とは反対に、とても温かく優しい表情で、なんだか目頭が熱くなってくる。


「だけど! だけど……」