(ゲイル様に不足はない? そんな気持ちで彼と結婚なんてしないでほしい)


 だってわたしは、ゲイル様がいい。
 ゲイル様じゃなきゃ嫌だ。

 それなのに、どうして――どうしてエミュリアなの?
 彼がエミュリアとの結婚を望んだのだろうか? わたしは思わずうつむいてしまった。


「ああ、一応ウィロウも候補に挙がっていたみたいなのよ? だけど、ウィロウは一応分家の娘――伯爵令嬢だし」

「…………そう」


 エミュリアの言い分は一応わかる。主家の娘が分家の娘より優先されるのは仕方がないことだ。だから、ラジェム家に対して縁談が来たなら、エミュリアをと言われるのは当然だろう。
 だけど、わかっていても感情が追いついてくれなかった。


「それに、ウィロウってせっかく買ったものをすぐに捨ててしまう悪い癖があるんだもの。結婚相手をすぐに捨てたりしたら大変でしょう? だから、わたくしのほうが適任だって説明をして……」

「待って――今、なんて言ったの?」

「え……?」


 わたしの問いかけに、エミュリアが静かに息をのむ。周りの令嬢たちが戸惑った様子で数歩後ずさった。