ゲイル様はそれ以降も、わたしが新しいものを購入するたび、すぐに声をかけてくれるようになった。

 涼し気なスカーフに、カバンに付けるチャーム、エナメル素材のペンケースに、ブランケットにいたるまで。
 それに、少しだけ前髪を切ったこととか、香水を変えてみたこととか、そういった些細な変化にも気づいてくれる。

 こんなの、家人ですら気づかない。本当にわたしのことを気にかけてくれてるんだって、そう思うと嬉しくて、照れくさくて――それからほんの少しだけ申し訳ない。あの日、わたしがしょげてるところを見せなかったら、ゲイル様にこんな手間をかけなかったはずだから。


「――別に、手間だなんて思ってないよ」


 だけど、あるとき思い切って尋ねてみたら、ゲイル様はニコニコと首を横に振った。


「本当に? こんなに声をかけていただいて、ゲイル様の負担になっているんじゃないかと……」

「ううん。自然に目が行くだけだから、気にしなくていいよ」

「……自然に?」

「そう。気づいたらいつもウィロウ嬢を見ているんだ。なんでだろうね?」


 ゲイル様はそう言って目を細めて笑う。恥ずかしさのあまり、わたしは頬が熱くなった。