「おはよう、ウィロウ嬢」

「……! ゲイル様、おはようございます」


 教室に入ると、すぐにゲイル様が声をかけてきた。元々そんなに親しいわけじゃなかったから、一緒に登校したエミュリアや他の令嬢たちが少しだけ驚いた表情を浮かべている。


「そのブレスレット、すごく綺麗だ。ウィロウ嬢にとても似合っている」


 彼はわたしの左腕を指差し、ニコリと笑う。


(あ……!)


 気づいてくれたんだ。新しくブレスレットを買ったこと。しかも彼は、エミュリアや他の令嬢たちの前で、それを言葉にしてくれた。これなら、わたしが真似したと思う人は誰もいないし、エミュリアも簡単には真似しづらい。嬉しくて胸がじわりと温かくなった。


「ありがとうございます。すごく、気に入っているものなんです」


 腕に手を当て微笑めば、彼はそっと瞳を細める。


「うん、そうだと思った」


 そう口にしたゲイル様の笑顔は本当に優しくて、みんなにバレないようにして少しだけ泣いた。