「これ、ください!」

「ありがとうございます。しかし……相変わらず事前に値段を確認なさらないのですね。いえ、私どもとしては嬉しい限りなのですが」

「だって! 買い逃したら絶対に後悔するもの! 本当に綺麗! すごく素敵!」


 伊達に金持ちの娘に生まれていない。しめるところはしっかりしめているし、父や母もわたしと似た性格をしているからダメは出ないのだ。
 しかも、よくよく確認してみたら、ガラス製ってことで想像以上に安かった。お値段の数倍の価値があるとわたしは思うんだけど。


「ありがとうございます。ウィロウ様のお言葉、必ずや職人たちに伝えましょう。きっと喜びますよ」


 店主はそう言って嬉しそうに微笑んだ。


 次の日のこと、わたしは早速ブレスレットを着けて学園に向かった。


(どうか! どうかエミュリアが興味を持ちませんように……!)


 願いはすれど、こればかりは自分の力ではどうすることもできない。だからといって着けていかないという選択肢もない。
 だって、わたしの望みはあくまでも『自分が気に入ったものに囲まれて暮らす』ことなんだもの。あの子に見つからないようにこっそり宝箱に隠して愛でるのじゃ意味がないのだ。