(まあ、大抵すぐに手放すことになっちゃうんだけどね……)


 はあ、とため息をついたそのとき、わたしの胸をときめかせるなにかが視界に入った。

 工芸店の店先に並ぶ、キラキラと光り輝くブレスレット。真ん中に鎮座するのは見たことのない色彩を放つ大きな緑色の石、その周りに散りばめられているのはダイヤモンドだろうか? 石以外の部分は紐で細く編みこまれている。
 上品で、洗練されていて、見ていてまったく飽きない。


(可愛い、可愛い、可愛い、可愛い!)


 ジュエリーショップに並ぶ品々と遜色ない――というか、どこで売られているとか、そういうことはどうでもいい。とにかくわたし好みだ。
 本当にひたすら可愛い。見ていてすごく癒されるし、制服にもドレスにも似合いそうなデザインだと思う。


「ああ、ウィロウお嬢様、いらっしゃいませ」


 そうこうしているうちに、店主がわたしに声をかけてきた。しょっちゅう入り浸っているので、すでに顔と名前を覚えられているのだ。


「おじさま、これ! とってもとっても素敵なんだけど! 一体どこから仕入れてきたの?」

「そちらのブレスレットですか。ああ……ウィロウお嬢様ならお気に召すと思っておりましたよ! 実はそちらはブランタン領のガラス職人から買い付けた品でして」

「ガラス職人? じゃあこれ、ガラスなの?」

「さようでございます」


 店主の言葉にわたしは思わず息をのむ。
 どうりで工芸店に置いてあるはずだ。わたしは身を乗り出した。