どうでもいいものなら、こんなふうには思わない。好きだからこそ、気に入っているからこそ悔しくて……手放してしまいたいと思うのだ。まるでケチをつけられた、汚されたみたいで、見ているだけでモヤモヤする。おまけに、わたしよりもエミュリアのほうが似合っているし。
 我ながらプライドが高いとは思う。それに『簡単に手放してしまえる程度の気持ちだったんだろう?』って言う人がいるのもわかっているけど、こういうのは気持ちの問題だから仕方がない。


「……これまでにも、こういうことが?」

「ええ、割と頻繁に」

「その度にここへ来て、お気に入りのものを捨ててきたのか?」

「ええ。相手は親族だから家で捨てるのは憚られて……だって、理由を聞かれたくないでしょう? その点、学園に捨て置いたら、換価価値のあるものは売り払って孤児院やどこかに寄付してもらえるんじゃないかと思ったの。……そりゃ、学園側に要らぬ面倒をかけて申し訳ない気持ちはあるんだけど」


 わたしはゲイル様の手から髪留めを受け取ると、ゴミ捨て場にそっと戻す。夕日を受けて輝く金細工が、緑色の石が、キラキラしていてとても綺麗で、なんだか涙が滲んできた。


「そういうわけなので。このことはくれぐれも他言無用でお願いしますね」


 そう懇願したら、ゲイル様は「わかった」とうなずいた。