「僕が一番怖いことは、あなたを失うことなんです」


 メレディスの言葉が胸に強く突き刺さる。私は彼の肩に顔を埋めた。


「皇女を死なせてしまった男だと国民に罵られる――そんなことはどうでもいいんです。そうじゃなくて、万が一オウレディア様が死んでしまったら、僕はきっと生きていけないから……」


 小刻みに震える身体。まるで私の存在を確かめるように、メレディスが私を抱きしめる。


「メレディス……」

「だからこそ、本当に僕でいいのか悩んだし、『絶対に僕で大丈夫だ』と自信を持って言えない自分がたまらなく嫌でした。――そうしているうちに、両親があなたとの婚約を破棄してしまって」

「――うん」


 やっぱり婚約破棄を決断したのはメレディス自身じゃなかったんだ。……そう思うと胸が温かくなる。


「僕がオウレディア様を幸せにしたかったのに――けれど、これでオウレディア様は助かるのかもしれないと、そう自分に言い聞かせて今日まで生きてきました。しかし……」

「だったら、メレディスが私と結婚してよ」


 私はそう言って、手のひらでメレディスの両頬を包み込む。それから、触れるだけのキスをした。