「私ね、いっそのこと、このまま諦めてなにもしないほうがいいんじゃないかって思うの」

「え?」


 私の言葉にメレディスが目を丸くする。私はそっと目を細めた。


「私ね、あなたとの婚約がなくなったあと、たくさんの人に会ったの。そのなかで、何人かの男性が私を愛してくれるって、そう約束してくれたわ。だけど、もしも結婚して私が死んだら、その人はきっと皇女を死なせてしまったことに責任を感じてしまうでしょう?」


 どんなに強い人でも……今は大丈夫だって思っていても、いざとなったらそうはいかない。少なからず責任を感じて苦しむはずだ。


「もしもこのまま誰とも結婚をしなかったら、傷つくのはお父様やお母様だけで済む。関係ない誰かに辛い想いをさせずに済むんじゃないかって、そう思うの」


 苦しむ人間はできる限り少ないほうがいい。元々、お父様が魔女の恨みをかったのが原因なんだし、私たち家族だけの問題にしたほうがいいんじゃないかって。


「ダメです! そんなこと、絶対に」

「メレディス……」


 メレディスはそう言って、瞳いっぱいに涙を浮かべる。それから私のことをギュッと力強く抱きしめた。