(私はいったい、なにを迷っているの?)


 早く候補者を絞って、その人により愛される努力をするべきだろう。時間はもう、ほとんど残っていないのだから。


「ねえ、少し寄り道してもいい?」

「はい、殿下」


 気晴らしにと一人で出かけた先で見つけた小さな教会に馬車を停める。古いけどよく手入れされた教会だ。

 おそるおそる中に入ったら、そこには先客がいた。見た感じ若い男性のようだ。
 ひざまずき熱心に手を合わせるその様子は、見ていて心打たれるものがある。どうやら私が来たことにも気づいていないようだし、いったいなにを祈っているのだろう?

 すぐ近くまで来たところで、彼はようやく私の存在に気づいたらしい。ふと静かに顔を上げる。


「あっ、ごめんなさい。邪魔をする気はなかったの。どうか、そのまま……」

「オウレディア様?」


 懐かしい声。私は目を丸くする。