「――ねえ、ジェイルは私のことを愛してくれる?」

「え?」

「本当に、心から愛してくれる?」


 本当はそんな言葉を口にするべきではない。だけど、不安のあまり、ついついそんなことを尋ねてしまう。


「もちろんです。結婚をしたら、殿下を一番に想い、大切にいたしますよ。そういえば、はじめてお会いしたときに、陛下も同じことを尋ねていらっしゃいましたね」


 ジェイルはそう言って朗らかに笑った。彼につながれた手のひらが温かい。目頭がじわりと熱くなった。


「だって、死んじゃうんだもの」

「え?」

「十八歳までに私を心から愛してくれる人と結婚できなければ、私は死んでしまうの。だから……」


 胸がたまらなく苦しい。不安で胸が押しつぶされそうだ。
 ジェイルは少し目を見開き、以後なにも言わなかった。

 彼から【辞退したい】と手紙が届いたのは、それから数日後のことだった。