「ジェイルか……たしかに、私が受けた印象も彼が一番よかった。登城回数も候補者たちのなかでは一番だ。事前の素行調査にも問題はないし、彼ならおまえを愛してくれるだろう」

「うん……そうだったらいいんだけど」


 彼が相手なら、私は死なずに済むかもしれない。十八歳以降も生きていけるかもしれない。


(だけど、怖い)


 死へのカウントダウンはとっくの昔にはじまっている。

 呪いの話をはじめに聞いたとき、どうして魔女はそんなまどろっこしいことをしたのだろう? と思っていた。さっさと命を奪ってしまえばよかったのに、って。
 だけど、今ならわかる。単に死んでしまうより、こちらのほうがよほどお父様に与えられる絶望感が大きいのだ。

 だって、仮に今、私が死んでしまったとしても、それは魔女だけのせいじゃない。愛してくれる人を見つけられなかったお父様や私が悪かったってことになるんだもの。変に助かる道を用意している分だけ、底意地が悪いと私は思う。