『ゴツすぎる』と婚約破棄されて追放されたけど、夢だった北の大地で楽しくやってます!〜故郷は剣聖の私なしにどうやって災厄魔物から国を守るんだろう?まあ、もう関係ないからいっか!〜


「ところで、アリアちゃんはこんなところでこんな時間からなにしているの?」
「あ、私は今から樹氷の森に薬草を取りに行くのだ。セッカ先生の常用薬の材料の薬草は急務らしいからな」
「ああ、この間孤児院の子どもたちが外壁に出て摘んできて大変だったらしいものね。わかったわ、樹氷の森への道に案内してあげる。雪の道っていくつもあってよくわからないでしょ?」
「いいのか? ありがとう!」

 森は見えるのだが、雪が壁のようになっていて『多分こっち?』という感じだったから道案内をしてもらえるのは助かる。
 タァナの後ろについていくと、三番目の脇道を曲がった。

「最初の曲がり角は魔物避けの結界紋章に行く道なの。二番目は猟師の使う小屋がある方への道。樹氷の森へ行く道は三番目。奥の四番目の道は樹氷の森の東側への道ね。薬草を採りに森の奥へ行くなら北への道になる三番目を使ってね」
「了解した。東の方にはなにがあるのだ?」
「猟師が獣を狩りに行くのに使うかな。浅い場所には一般的な薬草もあるから、使い分けるといいわ。なんだっけ? アナの花とか」

 下級ポーションの材料か。
 ちなみにマリタキノコやオルティ葉は、と聞くとどちらも森の奥の方らしい。
 というか、魔植物はすべて森の奥。
 ふむふむ、メモをとっておこう。

「でもある場所はわからない。ごめんね」
「大丈夫だ。探してみる」
「剣聖なら大丈夫だとは思うけれど、魔物も出るし時々厄災魔物も出るから……気をつけてよ? 私も厄災魔物に襲われたら全力ダッシュで町に戻るんだから」
「ああ。心配してくれてありがとう」

 勝てそうな気がするんだけど、まあ初めて戦った厄災魔物は実際強かった。
 パルセたちに紋章の使い方を聞いていなければ、私でも負けていたかもしれない。
 剣を折られては戦えなかったからな。
 そう思いつつ、折れてしまった剣の収まる鞘を撫でる。
 つい、いつもの癖で腰に下げてきてしまったけれど……この剣は折れているんだった。

「大事なものなの?」
「この剣か? 一応クラッツォ王国で一番硬く造られた剣として、前王陛下に下賜された剣だ」
「へ、へえー、一国の王様にもらった剣! すごい剣なのね!」
「ああ……」

 クラッツォ王国の前王陛下。
 ベルレンス様が成人されてから早々に退院され、辺境に移動して辺境伯となられた方。
 クラッツォ王国は近年本当に、魔物すら出なくなっており警戒の対象は隣国に移り変わっていた。
 だから前王陛下は辺境伯になって隣国への牽制を行うことを選択なされたのだ。
 だが、ベルレンス様はさらにその一歩進んだ選択をなされた。
 隣国と交流を深め、争いを起こさぬように和平を結ぶ選択を。
 その選択を私は正しいものだと思う。
 争うより、手を取り合う方がずっと難しく、素晴らしい。
 私は剣聖。
 人の姿をした剣。
 平和を望む人間が、手を取って隣に置くには相応しいとは言えない。
 今ならそれが、はっきりとわかる。

「じゃあ、私は町の反対側の除雪作業もあるからここでね!」
「ありがとう、タァナ!」
「がんばってねー」

 手を振って別れ、いざ森に立ち入る。
 こんなことを考えるのは悪いかもしれないが、ワクワクするな。
 雪の壁の道を進むと、急に気温が下がる。
 氷の木々……いや、木々が凍りついているのか。
 非常に薄暗く、それでより気温が下がったのだろう。

「さて。闇雲に探しては見つかるものも見つからない。確実に探し出す」

 セッカ先生の命がかかっているからな。
 時間をかけるつもりもない。
 五代目の賢者、レアナス。
 あなたに授けられた知識を使わせてもらう。

「[エレメントサーチ]!」

 聖魔力を用いた周辺探索の魔法。
 両手で円を作り、魔法陣を作り上げる。
 剣聖の紋章から紋章の形を魔法陣に投影することで聖魔力を流し、任意の広さ、任意の物を探すことができる。
 かなり便利な魔法だが、聖魔法で使うため基本的に五大英雄しか使うことができない。

「あった」

 指定したのはクラゼリとオルティ葉とマリタキノコ。
 アナの花は森の浅い場所でも見つかるらしいが、これらは奥地に近い場所でなければ生息していない。

「森の中は街道と違って雪が少ないな。すべて樹氷に吸収されているように見えるが……」

 ちらほらと雪が降り始めたので、どんよりとした雲を見上げる。
 不思議なのだが、木々が雪を吸い込むようにしていた。
 ということは……やはりこの樹氷の氷、魔氷だな。
 森全体にどことなく悪意のような物を感じる。
 降り続ける雪を喰らい、氷の木が成長をしているのか。
 やはりこの土地を長く悩ませている寒波は意図的な悪意。
 そんなことを可能とするのは厄災魔王に他ならない。
 薬草を採り終えたら、永久凍国土(ブリザード)にギリギリまで近づいて封印紋章を見てみるか。

「あ……あった。もしかしてこれか?」

 樹氷と樹氷の間に緑色の草がもっさりと生えている場所を見つけた。
 目立つな。
 なるほど、これなら子どもたちでもすぐに見つけられそうだ。

「図鑑と見比べて……うん、まず間違いなさそうだ。どれだけの量が必要なのだろう? 採りすぎるのはよくないとアマルさんに言われたからな……とりあえずこのくらいか」

 根本近くをナイフで切って、ポシェットにしまう。
 次にオルティ葉を探し、マリタキノコも無事に採集完了!

「あとは……封印紋章だな」

 ここまでは薬草師としての仕事。
 だがここからは剣聖としての仕事。