私の幼なじみは美男美女で有名だった。

明るくて頼りになる二人は高校でも人気者。

地味なモブキャラAの私とは違う世界を生きる存在なんだと思っていた。

まるで物語に出てくる王子様とお姫様みたく、お似合いの二人。

一番近くで見ていた私の恋心は、砂のようにサラサラと崩れていった。

いつか二人が付き合うことになったら、その時は絶対に笑って“おめでとう”って言うんだ。

そう、決めていたのに。

ある日、その報告を人づてに聞いてしまった。

クラスメイトの彼ら彼女らが言うには、二人が付き合ってもう一ヶ月も経つらしい。

キュッと握ったこぶしを小さく震わせる。

幼なじみの私に、最初に話してくれると思っていたからなのか、とても寂しくなった。

それでも“おめでとう”を伝えたくて、その日の放課後、三人で帰路につく途中で口を開いた。

「二人とも付き合ってるんだよね。おめでとう」

言葉にするなり目から大粒の涙がこぼれる。

そのとき、私は気づいてしまった。

私の恋心は、まだ崩れていなかったこと。

私がまだ、王子に恋するモブキャラAだったんだと。