初めての恋のお相手は

「楸」



言いかけた私を、遮るように呼んで
びたりと立ち止まる祠堂さん。



「祠堂さん?」



同じように足を止め、祠堂さんを見上げれば
祠堂さんは繋いでいた手をほどいて

その指先を、私の唇に当てる。



「!」

「恋人の前で
他の男の名前、呼ばないでくれる?」

「…」

「妬いちゃうわよ」



真面目な顔で、ほんの少しだけ
怒ったような、拗ねたような口調で言ってから



「あなたは、私の恋人でしょう?」



にっと、妖しく笑って
言い聞かせるように問う。


『フリ』なのに
熱の籠った態度を見せられ、私は参ってしまう。



「………はい」



そっと視線を逸らして、小さく頷けば
祠堂さんはまた、私の手を取り、指を絡ませる。


ぎゅっと力強く握って、歩き出す祠堂さん。


どうしてか、機嫌良さげな祠堂さんに連れられて
私もまた、歩き出した。