初めての恋のお相手は

改めて自己紹介を済ませれば



「よし、じゃあ、楸ちゃん
まずは体をあっためよ。お風呂お風呂」

「え、あ、あの…」



こゆさんは、ぱちんと両手を合わせた後
私の腕を掴んだ。



「スグリ、明日の仕込み、よろしくね」

「ああ」



スグリさんにそう言い残して
こゆさんは、戸惑う私を引っ張って
お風呂場へと向かった。




――……




「戻ったわ」

「おかえり、祠堂(しどう)さん」



お風呂から上がって、数十分程。


あれこれ、私の世話を焼いてくれていた
こゆさんが、戻ってきたあの人に…
祠堂さんに声をかける。



「お、おかえりなさい…」

「少し、顔色良くなったわね」

「あの、すみません色々…」



座布団に座ったまま
同じように声をかければ

祠堂さんは私に顔を向けて
安心したように表情を緩めた。


見ず知らずの人を巻き込んで
迷惑をかけてしまったことが
いたたまれなくて、縮こまって謝罪する。


そんな私の前にしゃがみ込むと
祠堂さんは、くいっと私のあごを持ち上げて



「貰うなら、『ありがとう』がいいわ」



そう言って、妖艶に笑う 。