初めての恋のお相手は

「あ、あの…」

「怖かったね。事情は聞いたよ
とりあえず、今日はうちで休んでいって」



ひとり取り残された私は
助けを求めるように、女性に顔を向ける。

その人は、私の不安をやわらげるように
優しく笑って言葉を返してくれた。



「もう夜も遅い
今から家に帰るのも、警察に行くのも
不安だろうし、大変だろう」



同意するように、彼女のそばにいた
体格の良い、厳つい顔つきの男性が口を開く。


……見た目は怖いけど


無愛想で硬い口調だけど
言葉の端々から、人の良さがにじみ出ていた。



「……い、色々、すみません…
見ず知らずの方に、こんな…」

「気にしないで
あ、私達は怪しいものじゃないから
安心してね」

「その言い方が、あやしいがな」



にぱっと明るく笑うその人に
冷静な顔でツッコミをいれて
男性は、また私に顔を向ける。



「この店の店主のスグリだ
枩下(まつした)スグリ」

「妻のこゆでーす」

「し、白木、楸(しらき、ひさぎ)です…」