初めての恋のお相手は

――……



「……ここは…」

「この子達のお店よ」



足早に連れてこられたのは
あのコンビニから離れた場所にある
洋食屋さんだった。


営業終了後の店内を
オレンジ色の間接照明が淡く照らしている。


昔ながらのレトロ感漂う内装。

置いてある家具や、壁紙から
長い歴史を感じさせる。



「こっちこっち~」



ここまで、一緒に歩いてきたふたりの男女。


その内のひとり、快活そうな雰囲気の女性が
朗らかに笑って、私達を手招く。


厨房を抜けて、バックヤードへ。

更に、その奥に現れた扉を開けて
そこから階段を登って、2階にあがる。



「2階は居住スペースになってまーす」



両手を広げて、明るく
ルームツアーをするように
生活感漂う部屋の中に私を招く。



「あ、あの…」



道中、会話もなく

周囲を警戒するように
足早にここまで来たから

なにがなんだか
現状を把握できていない私は
戸惑ったような声しか返せない。



「あなた、今日はここに泊まりなさい
このお店、すぐ近くに警察署あるから」

「え?」



困惑する私に、一番最初に会ったあの人が
そんな事を言う。



「つけられた感じはなかったけど
念のため、外見てくるわ」


「その子のこと、よろしくね」



そんな言葉を残して
あの人は部屋から出ていった。