初めての恋のお相手は

「こゆ、悪い
ホール頼めるか? 」

「あ、うん!今行く!」



休憩室のドアを開けて
顔を覗かせたスグリさんが、こゆさんを呼ぶ。



「ごめんね、ふたりとも
ちょっと行ってくるね」

「手を止めさせて、ごめんなさいね」

「ううん
楸ちゃん。何かあったら、すぐ呼んで
これ、呼び鈴」



ポケットから取り出した
『呼び鈴』を私の手に握らせて
こゆさんは、そのままお店に戻っていった。



………防犯ブザー…



手の中にある大層立派な『呼び鈴』に
苦笑を浮かべつつも

徹底的に守ろうとしてくれる
こゆさんの優しさが、胸にあたたかく広がる。



「こゆのそういうとこ、素敵よね
私は好きだわ」



信頼している間柄であっても
万が一の警戒を怠らないこゆさん。


祠堂さんは
そんなこゆさんに好感を抱いているようで
柔らかく微笑んでいる。



「……お姉ちゃんと言うより
お母さんみたいです」

「そうね」