初めての恋のお相手は

「……っ」



横から響いた低い声に、びくりと身がすくむ。


怯えながらも、恐る恐る顔をあげると



「…」



目の前には、背の高い男の人がいた。


彫りが深い端正な顔をしていて



「…真っ青じゃない。それに、すごい汗」



私の顔を見るや否や
形の良い眉を心配そうに下げた。



…………男の人…だよね?



服装や体格、顔、声から
それはすぐに分かること。


だけど


どうして
そう疑問を感じてしまったのかと言うと


その人の話し方。



「具合が悪いの?
救急車、呼んだ方がいいかしら?」



……『かしら』?



話し方が、女性のそれだったから。


纏う空気も


どこか人を寄せ付けないような


まるで


氷のように冷たげで、洗練された
美麗な容姿とは違って


柔らかく、優しい。



……だからだろうか。



この人は、大丈夫だと思った。