初めての恋のお相手は

――…



「ここです」

「……うーん
ちょっと、セキュリティが心配な建物ね」



アパートを見つめて
祠堂さんが、難しい表情を浮かべながら呟く。


祠堂さんは言葉をにごしたけど
目の前にあるアパートは
誰がどうみても、おんぼろの木造アパートだ。


庭先は荒れているし、塗装は剥げてるし
屋根やら、窓やら、あちこち壊れかけてる。

外観もそうだけど、内装もぼろぼろ。

日当たりが悪いから
昼でも薄暗いし、寒いし

ドアの建て付けは悪いし
隙間風はすごいし、家鳴りもすごい。


とにかく、ぼろぼろ。



「家賃が安いので」

「もう少し、グレードアップはできないの?」

「すぐに引っ越すことが多かったので
……ストーカー対策で」



ためらいがちに返せば
祠堂さんが、はっとしたように口を押さえた。



「…ごめんなさい。配慮が足りなかったわ」

「大丈夫ですよ」



引っ越し費用も馬鹿にならないから
できるだけ、家賃が安いところを探して
転々としていた。



「それを除いても
ずっと、ひとりで暮らしてるので
節約できるとこは節約してるんです」

「…ご両親は頼れないの?
実家に戻ったり…」

「両親はいません
私、施設育ちなんです」

「……ごめんなさい
さっきから踏み込むような事ばかり…」

「いいえ」



気まずそうに声と表情を落とす祠堂さん。

首を横に振って、笑顔を向ける。



「あの、祠堂さん
良かったら、お茶飲んで行きませんか?
部屋は、あんまり綺麗じゃないんですけど…」

「あら、いいの?」

「はい
ちゃんとしたお礼にはならないですけど」

「充分よ、ありがとう」