初めての恋のお相手は

心の中で名前を呼んだ



その時。



「!」



ふっと、手首の拘束が解けるのと同時に
私の体は、誰かに引き寄せられて

伏せていた顔を上げ
恐る恐る、その相手を確認すれば


そこにいたのは、心の中で助けを求めた相手。



「………し、どう……さ、ん……」



祠堂さんだった。



走って、私を追ってきたのか
髪も、呼吸も少し乱れていて

でも

腕の中で、がたがた震えて、涙を流す私を見て



「…」



一度、目を開くと

まるで、何かの糸がぷつんと切れたかのように

見たことのない剣幕で
呆然としていたあの人を睨み付けた。



「…………お前」



聞いたことのない、低くドスの効いた声。



「なに泣かせてんだよ…?」



口調も荒く、乱暴で。



「俺の女なんだけど?」



激しい怒りを隠さず、向ける。



まるで、別人みたい。



目も、声も、表情も
冷たく、鋭く、荒々しい。


だけど


私を抱き締める手だけは、変わらず優しいままで


絶対的な安心感があって
だから、全然怖くなかった。