日本一のヤンキーは、私のことを守ると誓う

彼は微動だにせず立ち尽くして、ここから去る気配はない。
みんなやっているとはいえ横着して土足で通るなんて行儀悪いところを見られるのは気まずい。


靴下の底が汚れるのは気にならないから、靴を脱いで爪先立ちで歩く。


「靴、履かないの?」


静かだった男子が私の姿を見て口を開いた。


「え、あ、普段上履きで通るところなので」


おかしく思われたかと思ってしどろもどろに説明する。


「そっか、えらいね。きみ一年生?」


彼はにっこり笑って私の顔を見つめる。


「はい、一年生です」


「そっか〜。一年生ならこの先楽しいこといっぱいあるね。僕は三年だから今年の体育祭は絶対勝ちたいんだ。それでね、選抜リレーと400m走にも出るから見てくれると嬉しいな。じゃあね」


彼は本当に楽しそうに言い、軽い髪をひるがえして去っていった。
あの白い髪もあって運動場で見つけるのはそう難しくないだろう。400m走、見ることが出来たら彼を目で追いかけよう。