日本一のヤンキーは、私のことを守ると誓う

「マジでぶん殴ってやる!」

大園は拳をブンブンと振り回す。

女相手に本気で殴る、か……怒らせたのはこれで二度目だし、ありえるかもしれない。



もしも本当に拳が飛んできたら避けなければいけないけど、あまり見すぎると刺激してしまうかもしれない。大園から目を逸らす。


そのとき椅子に座っていた隆火さんがふっと笑って「お前、この女のことを殴るつもりなのか?」と聞いた。

それに対して大園は、

「はい! 気持ち悪いしこいつがいるせいで勘違いされて他のちゃんとした女の子に好かれなかったら嫌なんで、もう二度と俺のことなんか見れないようにずたずたにぶん殴ろうと思います!」

と胸を張って断言し、周囲から歓声が上がる。

「口だけだろ」

「仮にも女なんだから殴ってやるなよ」

「かっこいい〜」

などなど、相変わらず冷やかされていた。



「女に手あげるやつが女に相手される訳ねぇだろ」


歓声を突くように、この場にいる誰よりも低く圧のある声で隆火さんが呟くと、途端に静まり返った。


「殴り返さねぇ相手を殴るやつは不良の中でもカスだ」


隆火さんはこうも言い切った。
大園は面食らったまま立ち尽くす。


「お前らもう帰れ」


隆火さんは人払いをして、集まっていたヤンキーたちは狼狽えた様子でぞろぞろと去っていく。私はその流れについていくように去ろうとしたら

「お前は残れ」

と隆火さんに呼び止められ、何をされるのかと戦々恐々した。