日本一のヤンキーは、私のことを守ると誓う

隆火さんの前で発言することになり、内心恐怖を感じたけど、私は大人しく答えた。
すると隆火さんは大園さんを指差して聞いた。


「あいつより俺の方が怖いか?」


「とんでもない! いや、隆火さんが恐ろしくないわけではなくて、皆様は等しく私より偉い人だと思っています!どちらの方が、というか、私のような下っ端からしたらもう区別優劣つけられないくらいに恐れ慄いています!」


「どうしてそこまでへりくだる? プライドはないのか?」

「プライドなど、ありません! 私とはそういう生き物なので!」


不思議そうにする隆火さんに、私は断言した。
この学校のヤンキーと違って、プライドは私に必要ないものだ。三年間息を潜め、何事もなく生きていけたらそれでいい。

私の答えを聞き届けた隆火さんは、大園さんをチラリと見ると、「女相手にぶん殴るなどとは小さいやつだ」と言う。


「お前はどう思う?」


「え、あ、私は、元はといえば私の態度がなっていないからこうなったのであり、相手の方の気持ちはいたって普通です。誰だって自分が舐められたらいい気にはならないでしょう。彼は小さくもなく、至って普通です。私のプライドの方が小さいってもんですよ。あはは」


たとえ隆火さんに同意を求められても、大園さんを下げることは出来ない。

なめられたら潰す、それがヤンキーの道理。ヤンキーの常識なのだ。ここはヤンキーが多数派で、私は少数派。紛れ込んだ異物の分際で多数の人を不快にさせる訳にはいかないから、彼らの道理を尊重しよう。

私は自分の立場を極限まで下げて大園さんの立場を保とうとした。これが吉と出るか凶と出るか。


隆火さんは以降沈黙し続け、大園さんも機嫌を損ねた様子はなかった。

大園さんたちが「俺ら、この辺で失礼します」とその場を去るのに続いて、私も黙って頭を下げ、そそくさと後者裏を去った。


ひとまず窮地は切り抜けた、のかな。