リベンジ・フラグメント

彼を見た瞬間、時が止まった。

高校時代、自分を地獄に突き落とした張本人が、目の前のカフェのテーブルで微笑んでいる。
日差しが窓から差し込み、彼の髪を優しく照らしている。


「どうしたの? ぼーっとして。」

隣に座る友人の声で我に返る。
私は慌ててコーヒーカップを手に取り、唇を湿らせた。

「なんでもない。」

だが心臓は激しく鼓動している。
抑えきれない怒りと困惑が胸の中で渦巻く。
この瞬間まで、彼の顔も名前も頭の中から消し去ったつもりだった。
忘れようと努力したからだ。
それがどうだ、数年ぶりに彼を見かけたことで、あの時の記憶が一気に蘇った。

廊下で響く笑い声。
無数の視線。
身体に残った青あざ。

その全てを彼が背後で操っていた。
私を笑い者にし、孤立させた中心人物。
それが彼、高瀬翔太だった。私の目は彼を追い続けていた。
友人たちの会話は耳に入らない。
翔太は友人らしき男性と楽しそうに話している。
顔つきは昔と変わらないが、その表情はどこか柔らかい。

“あいつがどんな人生を送ってきたのか知らないけど、私の中の傷はまだ癒えていない。”



私は拳を握りしめた。
胸の奥に宿る怒りが再燃する。
この再会を運命だと考えよう。
あいつに自分が味わった苦しみを少しでも理解させてやる。
数日後、私は行動に出た。

翔太が通う英会話教室のクラスをリサーチし、偶然を装って同じクラスに登録した。
細心の注意を払い、まずは彼の注意を引く。そして…私の計画は完璧だ。

その日、私は教室の席を彼の近くに選び、何気なく話しかけた。

「Hi, my name is Ayaka Kusunoki. Nice to meet you.」

私の言葉に、翔太は少し驚いた表情で顔を上げた。

「Oh, hi. I'm Shota Takase. Nice to meet you too.」

私は微笑んで自己紹介を続けた。整形で全く別人となった私の顔を見ても、彼は私がかつての同級生だとは全く気づいていない。

「I just started this class. It seems fun here, doesn’t it?」

「Yeah, it’s a good place to practice.」

彼の反応を観察しながら、私は会話を続けた。何も知らない彼の無防備な表情に、複雑な感情が胸に湧き上がる。

話は順調に進んだ。英語での会話や趣味の話題で自然と打ち解ける。計画通りだ。数時間後、私たちはクラス後に連絡先を交換し、次のセッションでまた会う約束をした。

教室を後にした私は、冷静に次のステップを考え始めた。

計画は簡単だ。

まず、翔太の信用を得る。
彼が私を完全に信頼し、心を開くまで時間をかける。
そして、彼の弱点を探る。
過去の彼の行動を暴き、彼が積み上げてきたものを一つずつ壊していく。
最終的には、彼自身が自分の行いを後悔し、孤独と絶望の中に沈むよう仕向ける。
それが私の目指す復讐だ。

「高瀬翔太、お前の人生はこれから壊れていく。」
「絶対に許さない。」

心の中でそう呟きながら、私は次のクラスを楽しみにしていた。