不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

「それは願ってもない。しかし、いったいどのような理由でそう考えるようになったのか。貴殿は主君の命にそむいてまで剣を引くような人物には見えないが」

「……この戦を続けることは、我が国の利とならない。そう判断したまでだ」

 ゲンナジーの目は、わたしたちと一緒にいるネージュさんたちに向けられている。

「貴殿たちは、幻獣を手なずけることに成功したようだ。その恐るべき力をもってすれば、私たちの軍などひとたまりもないだろう」

『誰が手なずけた、だ。おれたちはおれたちの意思で、こいつらを手伝っているだけだからな!』

『そうじゃ。まったく、わらわをそこらの獣と一緒にしてくれるでない』

『トレ……眠い……むにゃむにゃ』

 ネージュさんたちのそんな反論は、もちろんゲンナジーの耳には届かない。彼はじわじわと数を増し続けているフラッフィーズを見て、必死に震えをこらえていた。

「その青い鳥……それに包まれた時、私は言いようのない幸福を感じた。軍人など辞めてしまおう、畑を買って、家族みんなで大地の恵みと共に生きていこう。そんな考えが頭の中を埋め尽くした」

 めまいでも感じているのか、ゲンナジーが息を吐いて額を押さえる。

「そのふわふわとした気持ちをようやく振り払った時、私の剣はさやごと地面に落ちていた。無意識のうちに、剣帯を外してしまったらしい」

 騎士や軍人にとって、剣というのはある意味命よりも大切なものなのだと、前にそうヴィンセント様から教えてもらった。それを地面に落とすなんて、よほどのことだ。

「私は悟った。こんな相手と、まともにやり合えるはずがない。だから私は、陛下に進言しようと思う。この国に手を出すのは、後にするのが良いでしょう。今のままでは失うものばかり大きく、何も得られませんと」

「……その進言にどれほどの効果があるのか、判断がつかないな」

 慎重に言葉を返すヴィンセント様に、ゲンナジーはにやりと笑いかけた。