不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

『夢鳥か。おれも聞いたことがあるぞ。ということは……』

『あやつらはまだまだ増える。あれは、序の口ということじゃ』

『そうだな。そして、おそらくは……』

『うむ。とびきり面白いことになるじゃろう』

 スリジエさんとネージュさんは、何やら物騒なことを話している。大丈夫かなと思いながら、落ちないように枝をつかんで下をのぞき込んだ。

 そこはもう、一面の青に埋め尽くされていた。敵も味方も、トレが生やした木々も、みんなその青に飲み込まれている。まるで湖のようなその青からは、ぴいぴいという可愛らしい声が聞こえてきた。

『……戦い、止まった』

 さっきまでじたばたと暴れていたトレが、宙を見つめてふとつぶやく。それからぺたんと体を伏せて、眠ってしまった。

「トレ、大丈夫!?」

 必死に呼びかけても、トレはしっかりと目を閉じている。むにゃむにゃと、何やら寝言で返事しているようだった。

『あれだけ力を使えば、疲れもするであろ。しばらく寝かせておけ』

「それよりも、兵士たちは無事なのだろうか。その、フラッフィーズに埋もれてしまったが……」

『あいつが夢鳥のひななら、大丈夫だ。……少なくとも、怪我はしていないだろう。ひとまず、おれたちも降りよう』

 そうしてわたしたちは、スリジエさんに乗せてもらって地面に降り立った。というか、フラッフィーズの海にぼふんとめりこんだ。

「わっ、みんなぴよぴよ鳴いてる……」

 人の背丈よりも高く積み上がったフラッフィーズは、そんな状態でもいつもと同じように、のんきにぴよぴよと鳴いていたのだ。あったかくてふわふわで、思わず笑顔になってしまう。

「さて、味方の兵士たちをどうやって掘り出したものか……」

 あせりのにじんだ声で、ヴィンセント様がつぶやく。

 そのとたん、フラッフィーズが声をそろえてぴいと鳴いた。一羽一羽の声は小さいけれど、合わさったその声は鋭く響き渡り、びりびりと空気を震わせた。

 そしてフラッフィーズはどんどん減っていった。増えた時と同じように、あっという間に数を減らし、最後の一羽がわたしの肩に飛び乗る。

 そうしてわたしたちが見たものは、地面に倒れている兵士たちの姿だった。彼らは一人また一人と目覚め、立ち上がる。

 ところが彼らは、戦いを始めはしなかった。ふらふらとした足取りで、両軍は後退していってしまったのだ。味方の軍はそう遠くないところで立ち止まったけれど、敵の軍は驚くほど後ろに下がっていってしまった。

「ええと、これはいったい……」

「……ひとまず、ブラッドのところに戻ろうか」

『そうだな。あいつと話して、何がどうなったかつかむといい』

 事態がつかめていないわたしとヴィンセント様、何やら楽しげに笑っているネージュさんとスリジエさん。それにスリジエさんの背で眠っているトレと、いつも通りのフラッフィーズ。

 そんなわたしたちは、首をかしげながら味方の陣へと歩いていった。