不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

 味方は戸惑いながら、壁をじっと見つめていた。

 敵たちはやはり戸惑いながらも、壁に向かって矢を射かけていた。それも、火矢を。けれど火がつきそうになると、つる草が腕のように伸びてきて火をもみ消してしまう。

「トレ、落ち着いて。ネージュさんたちに手伝ってもらって、総大将? とかいう人を捕まえれば、この戦いは終わるの」

『でも、またいつか攻めてくる。だったら、もう戦えないようにするほうがいい。この場所を、戦場にはさせない』

 トレは普段からちょっと頑固なところがある。けれど今の彼は、全く聞く耳を持っていないようだった。

 どうしよう。このままじゃ。不安から胸元で手を組んだ時、ぴいという声がした。

 そういえば、フラッフィーズを二羽、服の中に入れていたのだった。好き勝手に増えたり減ったりする彼らだけれど、屋敷を飛び出してからはずっとおとなしかった。

 ぼんやりとしたままフラッフィーズを胸元から出して、手に乗せる。

「ねえ、どうしたらいい? わたし、トレを止めたいの。そして、この戦いも止めたいの。でもわたしには、何の力もなくて……」

 呆然とつぶやくわたしを、ヴィンセント様たちは気遣うような目で見ていた。トレは相変わらず、激しく暴れまわっている。

 と、今度はフラッフィーズの様子が変わった。彼らはぴいとひときわ大きな声で鳴くと、ぱたぱたとわたしの手から飛び立ったのだ。

 二羽が四羽に、八羽に、十六羽に。彼らは恐ろしい勢いでどんどん数を増して、青い雲のようになりながら戦場のほうに飛んでいく。

『あいつら、何をするつもりなんだ?』

『なんとなく嫌な予感が……いや、どちらかというと面白そうなことになる予感がするのう』

「フラッフィーズ、大丈夫でしょうか……」

「危なくなったら逃げるなり姿を消すなりすると、そう思いたいが……」

 しかし彼らの行動は、わたしの予想を遥かに超えるものだった。 味方の陣と敵の陣が接していて、さらにその間に木の壁が作られつつある最前線。

 そこに達する頃には、フラッフィーズはものすごい数になってしまっていた。わたしたちが暮らしているあの屋敷より、さらに大きな群れだ。

「……あそこまで増えるのか、あいつは」

 目を見開いて呆然とつぶやくヴィンセント様を尻目に、スリジエさんが納得したような顔をしていた。

『あの増えっぷり……思い出したぞ。あやつはおそらく、夢鳥と呼ばれるもののひなじゃな』