本当のことを言えば、ここを離れたくなかった。ヴィンセント様のいない屋敷の中で、じっとヴィンセント様の帰りを待つ。考えただけで、辛かった。
でも、わたしはここでは足手まといでしかない。早く、ここを立ち去らなくては。
そろそろとうなずいたまさにその時、遠くで爆発音がいくつも聞こえた。恐ろしさに身をすくめると、ふわりと舞い上がるスリジエさんの姿が見えた。
『最前線で爆発じゃ。一、二……全部で五か所。こちら側に被害が出ておるのう』
伝令よりも早く状況を伝えてきたスリジエさんに、ヴィンセント様が呼びかける。
「スリジエ、正確な位置を説明できるか?」
『わらわを誰だと思うておる。ようく聞いておれよ、まずは……』
そうしてスリジエさんは語り出した。爆発が起こったのはわたしたちの軍の左翼、森を背後にして戦っていた部隊が大打撃を受けてしまったらしい。
「一番守りが薄いところを強行突破して、俺をまっすぐに討ちにくる作戦か」
ヴィンセント様が歯を食いしばっている。その知らせに、ブラッドさんたちの顔色も悪くなっていた。
しかしその時、下から思いもかけない声がした。
『ヒトいっぱい死んだ。森いっぱい壊れた。トレーフル怒った。あのヒトたち、許さない』
それはトレの声だった。けれどいつもおっとりとしている彼の声は、明らかに激しい怒りに満ちていた。
どうしたの、と声をかけるより早く、彼の姿が地面に沈み込んで消えた。
『トレの堪忍袋の緒が切れたようじゃの。わらわはこのまま上空から偵察しておるゆえ、なんぞ気づいたら教えてやらんでもない……っと、なんじゃあれは!?』
上空から、スリジエさんの驚いた声が聞こえてきた。彼女が何に驚いているのかは、すぐに分かった。
さっき爆発があった辺り。そこにとてつもなく大きな樹が姿を現していた。そしてそれは、ものすごい勢いで天へ天へと伸びていたのだ。
「なんだ、あの樹は……」
『まあ、状況から見てトレがやったんだろう。しかし大きな樹だ。長く生きているおれでも、あそこまで大きな樹は初めて見たな』
呆然としていたら、いきなり何かが飛んできた。あっという間に、その何かはわたしの体にからみついて、縛り上げてしまった。
でも、わたしはここでは足手まといでしかない。早く、ここを立ち去らなくては。
そろそろとうなずいたまさにその時、遠くで爆発音がいくつも聞こえた。恐ろしさに身をすくめると、ふわりと舞い上がるスリジエさんの姿が見えた。
『最前線で爆発じゃ。一、二……全部で五か所。こちら側に被害が出ておるのう』
伝令よりも早く状況を伝えてきたスリジエさんに、ヴィンセント様が呼びかける。
「スリジエ、正確な位置を説明できるか?」
『わらわを誰だと思うておる。ようく聞いておれよ、まずは……』
そうしてスリジエさんは語り出した。爆発が起こったのはわたしたちの軍の左翼、森を背後にして戦っていた部隊が大打撃を受けてしまったらしい。
「一番守りが薄いところを強行突破して、俺をまっすぐに討ちにくる作戦か」
ヴィンセント様が歯を食いしばっている。その知らせに、ブラッドさんたちの顔色も悪くなっていた。
しかしその時、下から思いもかけない声がした。
『ヒトいっぱい死んだ。森いっぱい壊れた。トレーフル怒った。あのヒトたち、許さない』
それはトレの声だった。けれどいつもおっとりとしている彼の声は、明らかに激しい怒りに満ちていた。
どうしたの、と声をかけるより早く、彼の姿が地面に沈み込んで消えた。
『トレの堪忍袋の緒が切れたようじゃの。わらわはこのまま上空から偵察しておるゆえ、なんぞ気づいたら教えてやらんでもない……っと、なんじゃあれは!?』
上空から、スリジエさんの驚いた声が聞こえてきた。彼女が何に驚いているのかは、すぐに分かった。
さっき爆発があった辺り。そこにとてつもなく大きな樹が姿を現していた。そしてそれは、ものすごい勢いで天へ天へと伸びていたのだ。
「なんだ、あの樹は……」
『まあ、状況から見てトレがやったんだろう。しかし大きな樹だ。長く生きているおれでも、あそこまで大きな樹は初めて見たな』
呆然としていたら、いきなり何かが飛んできた。あっという間に、その何かはわたしの体にからみついて、縛り上げてしまった。

