「あっ、ヴィンセント様だ!」
「みんな、ヴィンセント様が戻られたぞ!」
敵陣を抜けて、味方の軍のところに向かう。
味方の兵たちはヴィンセント様の姿を見て、泣きそうな顔になる。でもみんな、ネージュさんたち幻獣と、ヴィンセント様の隣にいるわたしを見て驚いていた。
けれどここが戦場だからなのか、兵士たちはすぐに真顔に戻る。剣を手にしたまま、きびきびと礼をした。
「ヴィンセント様、ブラッド様のところまで案内いたします!」
兵士が一人、進み出る。彼の案内に従って、わたしたちは味方の陣の奥へと向かっていった。背後からは、双方の兵たちが激しく剣を交えている音が聞こえ続けていた。
「ヴィンセント、無事だったのか!! しかしどうして、エリカ殿までここに? 幻獣たちまで連れて……」
味方の陣の奥深くで、わたしたちはブラッドさんに出迎えられた。前に屋敷に遊びに来た時はにこにこと柔らかく笑っていた彼は、今は見違えるほど厳しい、鋭い表情をしていた。
「彼女たちは、俺を救いに来てくれた。それよりもブラッド、戦況はどうなっている?」
「五分五分、よりもわずかにこちらが不利だ。君が爆発に巻き込まれて行方不明になった、その動揺を私では抑えきれなかった」
「いや、お前はよくやった。俺が思っていたよりもずっと、布陣は安定している。ここからは俺が指揮をとろう。全軍に伝えてくれ、俺が戻ったと」
「ああ、もちろんだ!」
それからヴィンセント様は、ブラッドさんや他の兵士たちとあれこれ話し合い、次々と指示を飛ばしていった。
彼が騎士として働いているところは初めて見たけれど、近寄りがたいほどの迫力だった。普段屋敷で暮らしている時の彼は無口で、ゆったりと穏やかだけれど、あれはとてもくつろいでいる姿だったのだなと、そんなことを思う。
邪魔にならないように少し離れて、ネージュさんたちと話す。
『それで、どうするエリカ。無事にあいつを救い出せたのだし、おまえはもう戻るか?』
『あやつも、それを望んでおるようじゃしのう』
『トレ、戦場嫌い……ヒトも草も、ぼろぼろのずたずた』
「……帰ったほうがいいのは、分かってるんです。でも、もしまたヴィンセント様に何かあったらって、そう思えてしまって……」
『なら、おれがここに残ろうか?』
ネージュさんが心配そうにこちらをのぞきこんでくる。スリジエさんとトレも、同じような表情をしていた。
「そうですね。それが、一番いいと思います……」
「みんな、ヴィンセント様が戻られたぞ!」
敵陣を抜けて、味方の軍のところに向かう。
味方の兵たちはヴィンセント様の姿を見て、泣きそうな顔になる。でもみんな、ネージュさんたち幻獣と、ヴィンセント様の隣にいるわたしを見て驚いていた。
けれどここが戦場だからなのか、兵士たちはすぐに真顔に戻る。剣を手にしたまま、きびきびと礼をした。
「ヴィンセント様、ブラッド様のところまで案内いたします!」
兵士が一人、進み出る。彼の案内に従って、わたしたちは味方の陣の奥へと向かっていった。背後からは、双方の兵たちが激しく剣を交えている音が聞こえ続けていた。
「ヴィンセント、無事だったのか!! しかしどうして、エリカ殿までここに? 幻獣たちまで連れて……」
味方の陣の奥深くで、わたしたちはブラッドさんに出迎えられた。前に屋敷に遊びに来た時はにこにこと柔らかく笑っていた彼は、今は見違えるほど厳しい、鋭い表情をしていた。
「彼女たちは、俺を救いに来てくれた。それよりもブラッド、戦況はどうなっている?」
「五分五分、よりもわずかにこちらが不利だ。君が爆発に巻き込まれて行方不明になった、その動揺を私では抑えきれなかった」
「いや、お前はよくやった。俺が思っていたよりもずっと、布陣は安定している。ここからは俺が指揮をとろう。全軍に伝えてくれ、俺が戻ったと」
「ああ、もちろんだ!」
それからヴィンセント様は、ブラッドさんや他の兵士たちとあれこれ話し合い、次々と指示を飛ばしていった。
彼が騎士として働いているところは初めて見たけれど、近寄りがたいほどの迫力だった。普段屋敷で暮らしている時の彼は無口で、ゆったりと穏やかだけれど、あれはとてもくつろいでいる姿だったのだなと、そんなことを思う。
邪魔にならないように少し離れて、ネージュさんたちと話す。
『それで、どうするエリカ。無事にあいつを救い出せたのだし、おまえはもう戻るか?』
『あやつも、それを望んでおるようじゃしのう』
『トレ、戦場嫌い……ヒトも草も、ぼろぼろのずたずた』
「……帰ったほうがいいのは、分かってるんです。でも、もしまたヴィンセント様に何かあったらって、そう思えてしまって……」
『なら、おれがここに残ろうか?』
ネージュさんが心配そうにこちらをのぞきこんでくる。スリジエさんとトレも、同じような表情をしていた。
「そうですね。それが、一番いいと思います……」

