不器用なわたしたちの恋の糸、結んでくれたのは不思議なもふもふたちでした

「その、俺からも頼みがある。今夜は、俺もここにいさせてくれないか。お前たちが屋敷の中で眠っているというこの特別な時に、自室で眠るのももったいないような気がするんだ」

 そう言って、ヴィンセント様は近くの壁際に腰を下ろしてしまった。それから、わたしに穏やかに話しかける。

「エリカ、君はもう自室に戻るといい。そろそろ真夜中だ、早く眠らないと明日に響くぞ」

 悩んで、考えて。おそるおそる、言葉を紡ぐ。

「あの、わたしもここに泊まりたいです。部屋から毛布を取ってきてもいいですか」

 わたしの言葉に、ヴィンセント様だけでなくネージュさんたちも驚いていたようだった。

「しかし君は、寝台以外で眠ることには不慣れだろう」

「はい。経験はありません。でも……わたしだけ仲間外れは、嫌です。それに、楽しそうですし」

 さらに食い下がると、ヴィンセント様はそれ以上反論せず、とても優しい笑みを浮かべた。

「分かった。ならば君もこちらにくるといい。この季節なら、風邪は引かないだろうし」

 広間を飛び出て自室の毛布をひっつかみ、大急ぎでまた広間に取って返す。そうして、ヴィンセント様のすぐ隣に座った。肩が触れ合って、温かい。

「ふふ、みんなで眠るなんて、どきどきします」

「あ、ああ。そうだな」

『見たかスリジエ、ヴィンセントが照れているぞ』

『見たぞネージュ。そこでがばりと抱き寄せてしまえばいいものを。ううむ、じれったいのう』

「……聞こえているぞ、二人とも」

 ヴィンセント様は不機嫌な声で答えている。でもきっとこれは怒っているのではなく、照れ隠しなのだろう。つい小さく笑ったら、彼も気まずそうな笑みを返してくれた。

 それからわたしたちはのんびりとお喋りをして、そのままいつの間にか眠りについていた。

 朝目覚めると、とても暖かかった。ヴィンセント様が、わたしの肩を抱き寄せて胸元に抱え込んでいてくれたのだ。ちょっぴり恥ずかしかったけれど、ちょっぴり夫婦らしくって嬉しかった。

 そしてわたしたちのひざの上にはネージュさんの尻尾がふわりとかけられていて、スリジエさんの翼が隙間風をさえぎってくれていた。

 トレの足元の草が長く伸びて、わたしたちの足元を守るように覆いかぶさっている。そしてその周りに、フラッフィーズが数十羽集まっていた。

 どうやらみんな、わたしたちが寒くないように気を遣ってくれたらしい。それが嬉しくて、ヴィンセント様の胸元に頭をもたせかけたまま、声を出さずに笑った。

 幸せすぎて、ちょっぴり怖い。そんなことを思ってしまうくらい、とびきりに幸せだった。