『いやあ、頼んでみるものだな。……快適だ。いっそ、このままここに住み着きたいくらいだ』
『なんじゃ、身も心も犬になり果てたかの。お主、一応狼であろ』
『そういうおまえも、すっかりくつろいでいるじゃないか。なんだ、翼をだらしなく伸ばして』
『思い切り伸びをしても翼をぶつけることもなく、土や木の葉で汚れることもない。ゆえに、わらわは存分に伸びをしておるだけじゃ』
『トレはちょっと落ち着かない。トレ、草の上が一番慣れてる。……ここに草、生やしてもいい?』
「さすがにそれは、少々困るな。……そうだ、少し待っていてくれ」
ヴィンセント様はそう言うなり、広間を飛び出していった。小首をかしげていたら、頭の上にフラッフィーズがぽとりと落ちてきた。上を見たら、青い毛玉がシャンデリアを埋め尽くされていた。
「……フラッフィーズ、どんどん増えていますね」
『わらわたちが堂々と屋敷の中にいるのが面白いのであろうな。これ、わらわで遊ぶでない』
いつの間にか大群になったフラッフィーズは、ネージュさんの尻尾の毛にもぐり込み、スリジエさんの翼をすべり落ち、トレの背中でおしくらまんじゅうをしている。
『ううむ、おれの毛が心地いいのか……寝始めたな』
『ええい、それ以上悪さをするようなら、吹き飛ばすぞ。ちいと落ち着け、ひな鳥ども』
『重くない。でもくすぐったい。トレの背中で遊ぶ、ダメ』
ちょうどその時、ヴィンセント様が戻ってきた。手にはふたのない木箱を抱えている。ちょうど、トレくらいならすっぽりと入れてしまうような大きさだ。
「俺が席を外している間に、何があったんだ?」
「フラッフィーズがはしゃいでしまっているんです」
「そうか。ネージュたちがそろっているのが珍しいのだろう。まるで子供だな。いや、ひな鳥なのだから実際に子供か」
そう言いながら、ヴィンセント様は手にした木箱をトレのそばに置く。
「石の床から直接植物を生やされるのは困るが、この木箱の中なら構わない。これで、どうだろうか」
『トレ、やってみる!』
フラッフィーズを振り落としながら、トレが木箱にぴょんと飛び込む。そのまま中で、足をじたばたと動かし始めた。
『できた。素敵』
トレの足元には、芝に似た植物がびっしりと生えていた。ところどころに、小さな可愛い花が咲いている。トレは満足げな顔で、その上に身を伏せた。
「さて、これでみなどうにか落ち着けそうだな」
その言葉に、ネージュさん、スリジエさん、それにトレがうなずいた。フラッフィーズは元気よく飛び回っている。たぶんこれも、肯定で合っているのだろう。
それを確認して、ヴィンセント様はもう一度広間を出た。
今度はすぐに戻ってきたけれど、その手にはなぜか毛布が抱えられている。ネージュさんたちには、既に十分な量の毛布を渡してあるのに。
『なんじゃ、身も心も犬になり果てたかの。お主、一応狼であろ』
『そういうおまえも、すっかりくつろいでいるじゃないか。なんだ、翼をだらしなく伸ばして』
『思い切り伸びをしても翼をぶつけることもなく、土や木の葉で汚れることもない。ゆえに、わらわは存分に伸びをしておるだけじゃ』
『トレはちょっと落ち着かない。トレ、草の上が一番慣れてる。……ここに草、生やしてもいい?』
「さすがにそれは、少々困るな。……そうだ、少し待っていてくれ」
ヴィンセント様はそう言うなり、広間を飛び出していった。小首をかしげていたら、頭の上にフラッフィーズがぽとりと落ちてきた。上を見たら、青い毛玉がシャンデリアを埋め尽くされていた。
「……フラッフィーズ、どんどん増えていますね」
『わらわたちが堂々と屋敷の中にいるのが面白いのであろうな。これ、わらわで遊ぶでない』
いつの間にか大群になったフラッフィーズは、ネージュさんの尻尾の毛にもぐり込み、スリジエさんの翼をすべり落ち、トレの背中でおしくらまんじゅうをしている。
『ううむ、おれの毛が心地いいのか……寝始めたな』
『ええい、それ以上悪さをするようなら、吹き飛ばすぞ。ちいと落ち着け、ひな鳥ども』
『重くない。でもくすぐったい。トレの背中で遊ぶ、ダメ』
ちょうどその時、ヴィンセント様が戻ってきた。手にはふたのない木箱を抱えている。ちょうど、トレくらいならすっぽりと入れてしまうような大きさだ。
「俺が席を外している間に、何があったんだ?」
「フラッフィーズがはしゃいでしまっているんです」
「そうか。ネージュたちがそろっているのが珍しいのだろう。まるで子供だな。いや、ひな鳥なのだから実際に子供か」
そう言いながら、ヴィンセント様は手にした木箱をトレのそばに置く。
「石の床から直接植物を生やされるのは困るが、この木箱の中なら構わない。これで、どうだろうか」
『トレ、やってみる!』
フラッフィーズを振り落としながら、トレが木箱にぴょんと飛び込む。そのまま中で、足をじたばたと動かし始めた。
『できた。素敵』
トレの足元には、芝に似た植物がびっしりと生えていた。ところどころに、小さな可愛い花が咲いている。トレは満足げな顔で、その上に身を伏せた。
「さて、これでみなどうにか落ち着けそうだな」
その言葉に、ネージュさん、スリジエさん、それにトレがうなずいた。フラッフィーズは元気よく飛び回っている。たぶんこれも、肯定で合っているのだろう。
それを確認して、ヴィンセント様はもう一度広間を出た。
今度はすぐに戻ってきたけれど、その手にはなぜか毛布が抱えられている。ネージュさんたちには、既に十分な量の毛布を渡してあるのに。

